オリジナリティとは?地味に地道に淡々と取り組む姿勢


受講生のめざましい進化を目の当たりにし、傑作が生まれる瞬間に立ちあえることの喜びをかみしめる日々。人はそもそも創造する生き物であり、創造性のスイッチを押しさえすれば、独自の表現はいとも簡単に現れるものだと、改めて実感しています。創造性のスイッチがどこにあるのか、それを探すのは宝探しみたいで楽しく、見つけたときは宝物を発見したみたいで嬉しいです。

上の絵は、一年前の教室開校時からの受講生であるゼキコさんの「シャケに乗った赤ずきん」です。
現在、この女の子を主人公にアニメーションを制作中です。

教室ではずっと、「創造性を活性化する」「生きた線を引く」「素直に描く」なかからオリジナリティを見出し、それを伸ばしていく、というスタンスで、様々なアプローチ(制作方法)を試みてきました。そしてそれはかなりの成果があったと思います。

また一方で、「プロになるための戦術を練る」というテーマも掲げていたのですが、こちらは少し難しさを感じています。
たとえばイラストレーションでいうなら、昨今の流行を把握したうえで絵のスタイルを決めていく、という戦術となると、流行に疎い僕はお手上げとなり、的確なアドバイスが出来なくなってしまいます。

いまどんな絵が求められているかをリサーチして、それに則した絵を描けるよう修練を積む、というのも、賢い戦術であり、立派な目標だと思います。ただ、それが「素直に生きた線を引き、創造性を活性化してオリジナリティを見出す」ことと相反する場合に、どう折り合いをつけたらいいのか、まだ答えが見つかりません。
両方できるといいんですが、なかなか難しいです。そもそも僕自身が、売れる戦術を考え、それをかたちにできているなら、もっと売れているはず……悲。

良い絵を描く、売れる絵を描く、その両方を目指していきたいという気持ちは変わりませんが、やはり順番として、まずは「良い絵を描く」ことであり、そして、良い絵を描くためには、創作に向き合う「姿勢」、「意識」がとても重要であるという、当たり前のことを、受講生の皆さんとまじわるなかで、改めて感じています。

ゼキコさんは、家族を愛し(旦那さんと仲良し)、ロックバンドを愛し(高熱でもライブに行く、一人で)、お酒を愛し(グラスの酒が半分になった時点でおかわり注文)、毎日が楽しそうです。好きなものがブレません。好きなものがブレないということは、突発的、激高的、高揚的に「好き」なのではなく、「地味に地道に淡々と好き」ということです。

週に一度、教室に来て、こうこつと赤ずきんを制作するゼキコさんを見ていると、好きなことに対して、素直な気持ちで、真面目に向き合う姿勢の先に、良い絵は生まれるもなのだなあと、感じ入ります。

自分らしい表現を見つけたなら、それを愛し、地味に地道に淡々と、素直に真面目に作り続けた先に、きっと「売れる絵」というのもあるのかもしれませんね。

ゼキコの赤ずきんアニメーション、ご期待ください。登場キャラなど、時折紹介していきます。




ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師