過日おこなわれた「快画と快療法」のワークショップでは、快療法の里ウリウを主宰している瓜生イチ子さんにも参加をお願いして、快画を体験していただきました。
イチ子さんは、快療法の提唱者である瓜生良介先生とともに30年以上にわたって多くの人に快療法を伝えてきた「快」の大ベテランです。
私は25年前に快療法を知り、以来ずっと、瓜生先生の「からだ治し」のアプローチは、どうも絵と通じるところがあるのではないかと思っていました。
医者や薬に頼りきるのではなく、自分の体を見つめ直し、創意工夫しながら体調を整えていくプロセスには、絵を描く行為と同じような主体性と創造性があるのではないかと。
そんな思いが、2年前から開催している快画塾のなかで、それまで描けなかった人が短時間で一気に描けるようになる現象を目の当たりにして、ますます強くなってきました。
「心地よいことをすれば自然治癒力が活性化して病は快方にむかう」という快療法と、「心地よく描けば自然描画力が活性化して絵は描けるようになる」という快画法。
どちらも、人間がもともと持っている本能(快に向かおうとする力)にフォーカスしています。
根幹は同じなので、枝葉を楽しむつもりで快療法と快画を行き来できたら面白いだろうなあ、という気持ちで今回のワークショップを開催しました。
それでは、「絵を描くなんて40年振りだわ〜」というイチ子さんが快画法によって生み出した絵をご紹介します。
1枚目
モデル(木村)を見ながら似顔絵を描きます。こちらから描き方の説明はしません。自分が知っている(または過去に教わった)描き方で描きましょう。
線がいっぱい出てきましたね。モデルの心の闇を捉えたのでしょうか‥‥。
それもあるかもしれませんが、たぶんこれは、イチ子さんの記憶のなかにある線が表出したのだろうと思います。
この記憶を排除していくと、いったい何が出てくるんだろう?
目の前のものを記録するとどうなるんだろう?
なんてことを、様々な快画のアプローチで実験していきます。
2枚目
同じモデル(木村)をよーく見て描く練習です。
大方の人は、「よーく見てくださいね」とお願いしても、なかなかよーく見てはくれません。
なので、よく見ざるを得ないような禁止事項をいくつかつくります。
イチ子さんの線、一気に減りましたね。モデルの心の闇も薄らぎました。
3枚目
2枚目同様、モデルをよーく見て、こんどはマジックで描きます。消しゴムは禁止。
この潔さ!心の闇は霧散しました。
「ちゃんと習ったことないからー」とか「へたくそだからー」とか言ってちゃダメです。
絵は心です。エイヤッと線を引ききる心意気です。
4枚目
モデルチェンジ。目の前に座っている女性を描きました。
記憶の線を完全に排除する描き方で描いたらこうなりました。
曖昧な線は一本もなく、すべて実線で描かれていることに注目。
5枚目
こんどは写真を見て描きます。マジック一発描きでジェームスブラウン
もはやイチ子さんのなかに「顔を描いている」という意識はありません。ただ形を記録しているだけです。
それなのに、出来上がってみると、顔になっていますね。
しかも、「顔を描こう」と挑んだ1枚目よりもイキイキとした表情の顔に。この顔に心の闇はありません。
6枚目
こんどは全体を捉えながら徐々に細部を攻めていきます。ダリと猫をマジック一発描きで。
もはやなんでこんな絵が描けてしまうのかイチ子さん本人にもわかりません。すべては自動的。
「快」の領域に身を委ねているだけです。
7枚目
ラストは細部攻めです。全体は見ませんし気にしません。
絵は苦手とおっしゃっていたイチ子さんですが、最後は楽しくてもっと描いていたい、という気持ちになったそうです。
技術の鍛錬が絵の上達法の全てと思いがちですが、記憶、観念、執着からスーッと逃れ、いま描いているこの瞬間を無邪気に楽しむだけでも、けっこう描けるようになるものなんですね。
やはりイチ子さんは、思った通り、解放の仕方が抜群にうまかったです。
快画法と快療法にはもっと共通点があるはずなので、引き続き探求していきたいと思います。
イチ子さんが毎月発行しているハガキに快画の感想がありました。
「ワクワクを封じ込めている蓋を開ける」
スバラシイ!