快画で開花!広島クラス・ゆりさんの超絶ドローイング

昨年(2015)10月からほぼ毎月、月イチペースで開催している快画塾広島クラス。

ゆりさんは、子供の頃に絵を習った経験があるものの、大人になってからはほとんど描いたことがなく、初心者同然(本人談)で、今年の2月にはじめて参加されました。

絵の上達法を訊かれ、「クロッキー帳を20冊買い込み、快画のやり方で全ページ描ききれば絶対うまくなりますよ」と伝えたところ、その通りに取り組みはじめました。

一ヶ月後、芸能人やミュージシャンを描いたクロッキー帳を見せてくれました。教わったばかりの快画手法で描かれた絵は、ぎこちなさはあるものの、丁寧に描かれた線に、今後の可能性を感じました。

「うん、うん、ほうほう」とページをめくっていると、とつぜん、異彩を放つ絵が出現しました。「これは?」と僕が尋ねると、「旦那を描いてみました」とゆりさん。生き生きと躍動する線、リアルなフォルム。この飛躍ぶりは一体……ページをめくるたび、驚嘆の連続でした。

ここに描かれているのは旦那さんですが、絵から伝わってくるのは、ゆりさんの眼差しと愛情です。「わあ、要平(旦那さんの名)の鼻ってこんな形してたんだあ」とか、「要平ったら、また拗ねちゃって。ぷぷ」というゆりさんの声と、微笑む顔が目に浮かびます。うーん、素晴らしい。これぞ快画!

 

快画術は、本物そっくり(写実的)に描くことを目的としていません。絵を「良く描く」のではなく、対象物を「良く見る」ことのほうに主眼を置きます。

対象物を凝視することに徹すると、良く(上手く)描いてやろうという野心は消え失せ、対象物の造形の美しさ、面白さ、不思議さを感じるようにようになります。それを自動的に紙に描き写すと、なぜか、生き生きとした線、リアルなフォルムが生まれるのです。

ゆりさんの要平シリーズは、写実描写とは違うリアルさがあります。写実に走らず、素直に眼前のものを描き写すことによって表出するリアル。これが、摩訶不思議な快画のパラドックスです。

もしかしたら、絵の才能とは、自前の技巧や、頭で想像するオリジナリティとキッパリと決別し、言われた通りのことをただただ愚直に遂行する能力のことかもしれない、と、ゆりさんを見て思います。

解説が長くなりました。魅惑の要平シリーズ、とくとご覧ください!

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最近になって、新しい画材にも挑戦しはじめました。今後がとても楽しみです。

ゆりさんからのコメント

【快画について】

こんな風に紹介してくださって、どうもありがとうございます。  嬉しくて、何度も何度も見返しました。

わたしは絵が好きですが、これまで本格的にデッサンなど習ったことがありませんでした。絵を勉強したことがある人が羨ましかったし、わたしもいつかはちゃんと…と思っていたところに偶然「快画塾」を知り、参加してみたのが始めです。

手元を見ずに、対象を見つめたまま描く「快画法」は、わたしにとって突拍子もなく、想像していた “ちゃんとした絵の勉強”とは全然違っていましたが(笑)、 快画法で描いた線は、「なんでこうなっちゃうの」と自分で笑ってしまうほどおもしろくて、家でもやってみたくなって、傍にいた要平(夫)が標的になり8か月。今や完全に日常の一部となりました。

手元を見られないとなると、対象しか見るものがないので、とにかくよく見て描きますが、快画法の大事なところは〝手元を見ない〟ことではなくて、つまりこの、〝よく見る〟ことなんだなと最近思います。

最近の要平は、ふと気づくと快画法に忠実な妻が自分を凝視しながらスケッチブックと鉛筆を構えてヨダレを垂らしているので、ちょっとイヤになっていたようですが、今回紹介していただいたのを見て「自慢の妻だ」と言っていました(ヨッシャ!!!これでしばらくは黙って描かせてくれます笑)。

こんな素人の絵を、おもしろがって見てくれる方々に感謝申し上げます。 快画塾のおかげで、描くことが、生活の中にすべりこんできたような感じです。

木村先生~引き続き、いろいろ教えてください。 よろしくおねがいします。

 




ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師