自由に描くために必要な不自由な枠

よく、「自由に描いてください」とか「楽しんで描いてください」などと言われますが、大人になってしまった私たちは、「自由!」「楽しい!」と心の なかで叫んではみるものの、すぐに「自由ってナンダ?」「楽しいってナンダ?」と、頭で考えてしまい、何をどう自由に楽しんでよいのかわからずにドギマギ します。

そんなときに有効なのが、枠をつくることです。「ここからはみ出ちゃダメですよ」とか「好き勝手に描いちゃダメですよ」とか。そうすると、「フン、少しくらいはみ出たっていいじゃないか」とか「フン、好きに描いてなぜ悪い」となり、自由意思が発動します。

どうも人間には、人から言われたことと反対のことを考えたり、やってしまう特性があるようですね(私だけでしょうか……)。

たとえば「好きな色を、好きなだけ使って描いていいよ」と言うと、「え、え、私の好きな色って?青も好き、赤も好き、黄色も好き、あ、灰色 も好き」となり、結局、絵の具箱にある24色ぜんぶを使い「あ、ぜんぶ好きだったのか」なんてことになり、いつまでたっても自分の好きな色が何なのかわかりません。

そこで、「黒だけで描いてね。他の色は使っちゃダメですよ」と、枠を設けると、描き進めるうちに、「ううう、どうしても、どうしても、色が使いた い」という欲求が芽生えます。そこで「じゃあ、1色だけ好きな色を加えていいよ」と許可します。すると「ううう、赤しかない!やっぱり私は赤が好き♡」と なります(ならないか笑)。

黒だけしか使えないとなると、黒でどこまで表現できるか、自然に創意工夫するようになるんですね。この創意工夫は、枠がキッカケで創出したものとい えます。そして枠内での創意工夫がマックスに達すると、自然な欲求として、色を使いたい、枠を壊したいとなり、ブレイクスルーが起こります。そのときに、 パワフルで自由な表現が生まれるわけです。

そんなことを、たびたび教室で目の当たりにしているので、たぶんひとつのアプローチとして有効なんだと思っています。

絵:Nori-Bee





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ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師