逆さ絵

ドローイング4講目は「逆さ絵」です。
男女の関係に限らず、ほとんどの事柄に「追えば逃げる」という法則が当てはまるように世の中は出来ています。
絵もそうです。たとえば「顔を美しく描きたい」「手を綺麗に描きたい」という意識が強いと、顔や手を描く場面にさしかかったところで緊張が走り、思うように描けなくなります。なぜこんなことになるかというと、意識のなかに「自分が思うような顔」「自分が思うような手」の観念あるからです。

これをいったん取っ払ってみるのが今回の逆さ絵です。
何を描いてるか忘れる(わからなくする)ことにより、あとでひっくり返してみたら「あ、描けちゃった」という戦法です。

お手本はピカソのドローイング作品「イゴール・ストラヴィンスキーの肖像」。これを逆さにして、線の長さや、線と線との間隔を目で測りながら淡々と模写していきます。

これ、デッサンのハウツー本によると、抜群に上達する練習法だそうです。
僕もはじめてやってみましたが、人物を描いてるというより、図形を組み合わせていく感覚でした。
お勉強っぽくて地味な作業ではありましたが、勢いにまかせた情緒的な線が制圧されることにより、描写の精度は確実に高まるだろうと思いました。

逆さ絵を続けていると、モチーフを図形や線の集まりと認識することに慣れて、正体しても同じ視点で描けるようになるのでしょう。
デッサン力を向上させたい人にはオススメです。

受講生のみなさんもほぼお手本通り正確に形を捉えることができました。
今日はそのなかから印象に残ったMARUさんの作品を紹介します。意外な展開となりました。
完成した逆さ絵
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ひっくり返すとこうなります
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この野太い線!ただの模写なのに、どうして線を太くする必要があったのでしょう。。
勉強っぽくて地味で退屈な作業なはずが、真逆。なんと遊びっぽくて派手で楽し気なことか。
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一気にピカソを描き上げたMATRUさんは、もう一つのお手本、マチスにとりかかりました。
どんなふうに描いているのだろうと思って彼女を見てみると、肩をいからせ、紙に顔を近づけて、すごい迫力でマチスと格闘していました。
うーむ棟方志功のようだ。。
筆圧によって紙のみならず画板にまで線のくぼみができていました。まさに志功。描くというより彫る!
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2ミリほどの間隔で引き直した線の跡。グッグッと力を込めて一息に引く。そして眺める。「違う!」と思って消す。また引く。
「この人は絵に本気なのだな」というのがわかります。

今回は知らず知らずにデッサン力が身に付く練習として行いましたが、本来、絵に練習なんてものはなく、描くからにはすべて本番、すべて本気であるはず。
そして本気で描いたものは、人の心を打つ、ということをMARUさんの絵で再認識しました。僕は心を打たれましたね。

 





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ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師