絵の原点は風景画、そして新たなスタイル顔面コラージュ。

先日の体験クラスに出席してくださった方から「描きたい絵のスタイルがいろいろあって定まらない」という話がありましたので、僕の作品を例にとり、絵のスタイルについて書きたいと思います。

僕は以前から人間の顔をモチーフに作品を制作していますが、実をいうと、人の顔にそんなに興味があるわけではありません。アイドルの顔はぜんぜん見分けがつかないし、街を歩くときも地面ばかり見ていて、すれ違う人の顔に目が行きません。
ではなぜ顔なのというと、単に「描きやすいから」ということになります。そして顔面コラージュについては、「自分しか出来ないから」という理由もあります。

 

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僕の絵の原点は間違いなく風景画にあります。
通っていたセツ・モードセミナーでたくさん風景写生をやるなかで、僕はどんどん絵にのめりこんでいきました。
水彩で描くこの風景画のスタイルは、長沢節先生の影響を受けまくっています。知ってる人がみたら「セツっぽい〜」と思われるかもしれません。でも気にしません。たぶん今描いてもこんな感じになると思います。
僕にとって風景写生は、心の底から絵を楽しめる行為であり、いつか還りたい場所でもあります。だからオリジナリティーとかどうでもいいのです。気持ちよければいい。

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井の頭公園(1997)

楽しんで風景を描いているうちに、だんだんと「風景を色のかたまりで見る」「空、建物、地面の境界線」「紙の四隅の処理」などを意識するようになりました。

顔面作品は、これら風景写生で意識したことを、どうオリジナルに結びつけたらよいか試行錯誤していくなかで出てきた表現方法といえます。
ですから、顔面コラージュを作るときは、背景を空に見立て、顔とのバランスや、髪の毛との境界線、四隅にどの色を置くか、などを意識します。たまに取材とかで「人間の内面に潜む暴力性を顔で表現したい」なんてことをうっかり語ってしまうこともありますが、ほんとうは、色と構図とフォルムのことしか考えていません。

ではなぜ風景画をオリジナルに結びつけようとしたかというと、「誰もやっていないことをやりたい」「目立ちたい」「世に出たい」(他にもありますが)という気持ちがあったんですね。純粋に絵を描くことを楽しむだけなら、セツっぽい風景画を描いているだけで十分でしたが、(幸か不幸か)僕のよこしま(?)な動機のせいで顔面画にたどり着いてしまったわけです。

最初に戻りますが、「描きたい絵のスタイルがいろいろあって定まらない」の質問にたいして僕の答えは「まずはやりたいこと全部やってみよう!楽しもう!気持ちよく描こう!」となります。楽しく気持ちよく描き続けていくなかで、めらめらと新たな野望が芽生えてきたら、身につけた技術と得意技を組み合わせ、目的に応じて表現スタイルを開拓していけばよいと思います。

「イラストを職業にする」ことを第一義に考えるなら、「楽しく描く」「気持ちよく描く」プロセスは不要かもしれません。合理的で効果的な方法は他にもあると思います。
ただ僕の場合は、絵の魅力と魔力を味わってしまったので、木村創作教室では、まずはそこを伝えていきたいと思っています。
その上で、生まれてきた作品をどう育てていくことができるかを考えていきたいです。

 

 





ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師