木村タカヒロです。
昨日の説明会&体験クラスは、12名の方々にご参加いただきました。
北風が吹く寒いなかお集りいただき、ありがとうございました。
ドローイングとコラージュを体験してもらいましたが、みなさん熱心に制作してくださり、良い作品がたくさん生まれましたので、解説と合わせていくつかご紹介します。
ドローイングでは、僕がモデルとなり、まずは10分間、そのあと5分間で、計2枚描いていただきました。使用画材は鉛筆と画用紙です。
一枚目。描き方についてこちらからは何も説明せず、自由に描いてもらいました。制限時間は10分。
若々しく描いてもらって嬉しいです(^-^)/
次に、僕のほうから描き方についていくつかの提案をして、5分間で描いてもらいました。
すこし歳をとりました。それでも実際よりかなり若いです(^-^)/ ありがとうございます。
ここで注目してほしいのは、一枚目よりも二枚目のほうが、短時間にもかかわらず、実物に近い描写になっていることです。
一枚目のときは、「10分間で似顔絵を描いてください」と伝えました。
二枚目のときは、「似せようと思わないでください」と伝えました。それなのに、不思議ですね。
ほんの少し描き方と意識を変えるだけで、このように、一気に絵が変わります。
かといって、一枚目が良くないわけではありません。優劣はつけられません。
ただ、自分で想像もしなかった線が、自分の中から自然に出てきた、というのは、かなり面白い出来事だと思うのです。
次の方。一枚目。
質実剛健!野武士的な僕の内面を感じとってくれたようです。嬉しいです。
二枚目。
戦のあとでしょうか。憂いがあってイイですね。そしてこの迷いのない線。美しい。
これ、もうイラストレーションとして成立しますね。
はじめに「僕のなかにある荒々しくも若干憂いのある内面性をスタイリッシュな線でイラスト化してください」とオーダーしていたら、きっとこの絵は生まれていなかったでしょう。
しかし、この一枚を描きあげてしまった今はもう、「荒々しくも若干憂いのある男の内面性をスタイリッシュな線で描けるイラストレーター」ということになります。
得意技はある日突然生まれるものです。
次の方。一枚目。
やばい。似てる!ここのところ寝不足が習慣化し、ぼんやりと精気のない自分を見抜かれてしまいました。お見事です。
そのなかで、比較的元気な線を残してくださいました。優しさに感謝です。絵としても素晴らしいですね。
次の方。一枚目。
さすが美大生!正統派デッサン。僕はこんなふうに描けないので羨ましいです。
二枚目。
前作では明暗で形を捉え、こちらはしっかりと線で描ききってます。しかも躍動してます。イイネ。期待の星。
次の方。一枚目。
あらまあ、かわいい。かわいいはずのない僕のようなオジサンを見てこのような絵が生まれるということは、きっと僕というモチーフを媒介にして作者の人となりが 表出しているのでしょうね。絵は人が出ます。素直で優しい方だと思います。
二枚目。
ちょっと老けましたが、素直さは変わりません。素直に見て描いたらこうなった。という絵はたいてい良い出来栄えとなります。しかし、ずっとこの状態が続くとは限りません。描き続けていると「うまく描いてやるー」という野心が芽生えてくるからです。そのとき、スランプがやってきます。が、それは次の段階の入口でもあります。
次の方。一枚目。
目など簡略化されていますが、表情に味わい深さがありますね。
二枚目。
遠くを見つめる目がイイですね。一枚目がスタジオで撮ったポートレイトだとしたら、これは日常の瞬間を捉えたスナップ写真のようですね。どちらもそれぞれ価値があります。
次の方。一枚目。
作曲家ですね。僕はたまにキムォーツワルトとして曲作りしているので、作曲家は光栄です。髪の毛を簡略化し、カタマリで描写しているようですが、てっぺんの寝ぐせは気になって省略できなかったのでしょうね。
二枚目
勢いがあっていいですねー。リズム、ですね。音が聴こえます。簡略化も進みました。寝ぐせは残ってます。
次の方。一枚目。
青年医師。この爽やかさは産婦人科ですね。とても上手です。ポートレイトとして完成度高いです。
二枚目。
獣医になりました。産婦人科に未練もありますが、こちらのほうが僕に近いような気がします。
次の方。一枚目。
ジャズ!この絵はあきらかに、作者と僕の間にある空気をキャッチしています。静まりかえった室内に響くカリカリカリッという鉛筆の走る音や、僕の緊張感、参加者たちの緊張感をビリビリと身体で感じながら、嬉々と鉛筆を走らせた結果、生まれたのだと思います。疾走感ありますね。
二枚目
もはや5分も必要ありませんでした。ほんとうはシュッと線を一本ひいて終わりにしたかったのではないでしょうか。
次の方。一枚目。
うまーい!モジリアニはきっと僕をこんなふうに描いてくれるのではないか、と想像がふくらみました。
二枚目
やっぱりうまーい。すべての線が美しいです。ドローイングの鬼!ですね。他にどんな絵を描かれるのか興味あります。
次の方。一枚目。
俺の空!(よく知りませんが笑)。まぎれもなく主人公ですね。つまり華があるということです。しかと未来を見つめる視線が作者のポジティブさを表しています。
二枚目。
線を減らしても主役の貫禄は健在です。いやむしろ貫禄が増した感じがします。線をそぎ落としていくと、作者のこだわりが一層強調されるのかもしれませんね。
次の方。一枚目。
とめどなくわきおこるノスタルジー。いま、こんな世の中だから、この絵を見たかった、という気がしますね。
二枚目
よく見ると、いくつかの消しゴムで消した跡を確認できます。つまりこの線たちは、試行錯誤のすえに選ばれた、珠玉の線ということになります。もう、無駄な線は一切ありませんからね。潔くて痛快です。ところで、眉毛は無駄と判断されたのでしょうか。一枚目にはあったのに……。
以上、作品の感想でした。
数点のつもりが、どれも素晴らしいので結局ぜんぶ紹介してしまいました。
絵はたくさん描けば上手くなるものですが、今回のように、ほんの少し描き方を変え、意識を変え、時間を変えてみると、目からウロコ的なことが、たまに起こったりします。「わあ、こんなん出てきたあ」というやつです。
クリエイター講座では、「わあ出てきた!」のチャンスを増やすべく、いろいろなアプローチで講義を展開していくつもりです。