神戸芸術工科大学1年生コラージュ

私が通っていた絵の学校(セツ・モードセミナー)の先輩であり、敬愛する画家の寺門孝之さんからお声がけいただき、5年前から毎年この時期に神戸芸術工科大学ビジュアルデザイン学科の特別講義として、1年生にコラージュ、3、4年生にアニメーションを教えています。

約1ヶ月間、毎週神戸に通っているのですが、加齢による移動の疲労はあるものの、授業が楽しみで仕方なく、このような機会を与えていただいた有り難さを噛みしめています。

1年生のコラージュは全部で5回あり、5年前に担当した当初は、授業冒頭で作り方を伝えて、そのあと3時間で制作するという授業を4回行い、5週目の最終日に成果物を講評するという流れでやっていました。

しかし、学生たちが制作しているあいだ教室をグルグル見回って様子をうかがい、たまにアドバイスしたり質問に答えたりするだけというのが、どうにも勿体無い気がして、3年目あたりから、教室での実習時間を極力減らし、制作は各自家でやってもらい、授業では合評会のみ、というスタイルに切り替えました。
そうしたら、ぐんぐん熱気を帯びてきて、すこぶる楽しく有意義な時間になってきました。

やり方としては、一人ずつ前に出て、ホワイトボードに課題で制作した作品を貼り、作品のコンセプトや、制作時に感じたこと、結果に対して思うこと、などについて解説してもらいます。

つぎに、そのプレゼンを受けてクラスメイトたちが質問をしたり感想を伝えたりします。はじめのうちは恥ずかしがって積極的に発言する人はあまりいません。

そこで、ちょっとしたルールを設けます。

・すぐに質問を思いつかなくても、条件反射的に挙手しよう。質問内容は指されてから考えればいいじゃん。

・すぐに感想を思いつかなくても、どこかに好きなところ、キレイなところはないかとじっくり作品をながめてみよう。それでも見つからないときは、作者が着ている服を褒めるとか、化粧を褒めるとか、立ち姿を褒めたって良いのだよ。

すると、次第に挙手率が上がってきます。
みんな素直。若いって素晴らしい!

もちろん、発表する側の人にも決め事があります。

・ハッタリをかます。
たとえば作品のなかのある部分について「なんでこんな綺麗に表現できたの?」と聞かれたら、「あ、たまたまです」とか、「いや、自分でもよくわかんないっす」とは言わずに、「狙いました。フフ」とドヤ顔で答えましょう。
自分が意図しなかった作品の美点を誰かが見出してくれた際にも、「あ、気付きませんでした」なんて言わず、「よくわかりましたね。アナタ、お目が高い!」と、上から目線で逆に相手を褒めたたえましょう。

これをやっていると、おもしろいことに、だんだんと私が伝えることがなくなってきます。どういうことかというと、私が言おうとしたことを学生たちが先に言ってしまうのです。学生同士で的確な講評ができているということですね。この割合いがどんどん高くなります。

このような授業スタイルに変えて、私の役割は「場を創ること」、そして「場を盛り上げること」ということがわかりました。

絵の勉強となると、どうしても技術的な上手さとか、プロになるためには?みたいなところに目がいきがちですが、モノの美しさを発見する眼を養ったり、褒めて相手に喜んでもらったり、褒められて自分に自信がついたりということも、絵を描いてみんなで見せあうなかで得られるものなので、それら全てをひっくるめてクリエイティブとみなし、人の作品(またはその人全体)のなかの良いところ、美しいところを、一生懸命さがす。絶対にいいところを見つけてやる!という意識を鍛えるような授業をこれからも続けていきたいです。

合評会のルールも、もっと面白いやつ考えたいな。

ということで、学生のみなさんの作品です。自分の顔写真をプリントして再構成する「顔面コラージュ」です。モノクロとカラーの2点つくってもらいました。事前の技術的な説明は一切ナシ。それでこのクォリティ。もう、プロじゃん!




ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師