モンタージュ

こんにちは。木村タカヒロです。
キャラクター講座の2回目は、モンタージュ似顔絵をやりました。
絵の得意な警察官が目撃者の情報を元に犯人の顔を描きおこすアレです。
「減点パパ」というTV番組で三波伸介もやってましたね(古っ)。
似顔絵といっても、顔の各パーツの形状と配置バランスの情報を素直に絵で再現するとどうなるか、という試みなので、別に似てない結果になってもOKです。

今回描きおこすモチーフは、日本の現首相とドイツの元首相です。人選や組み合せに特に他意はありません(念のため)。犯人役とか減点パパ役とかいう訳でもありません(念のため)。

 

まずは日曜クラス。

モチーフ:日本の現首相
聞き役:木村タカヒロ
目撃者役:助手Mちゃん

パソコンのモニタにモチーフの写真画像を表示し、Mちゃんはそれを見ながら僕の質問に答えます。
絵師(受講生)たちはその答えメモにとり、一通り聞き取りが済んだら制作を開始します。画材は画用紙、鉛筆、マジック。制作時間は1時間。
今回は、キャラクター制作で活躍されてるB子さんにも飛び入りで参加していただきました。

●モチーフの特徴
面長
前髪は短め
分け目あり黒髪
たれ目、ほそ目
一重まぶた
まるい鼻
鼻の穴は見えない
おちょぼ口
うすい唇
ぽよっとしたアゴ
目と眉の間隔あいてる。
大きい涙ぶくろ
ほうれい線くっきり
額にシワ2本
眉間がせまい
まつ毛ふさふさ
福耳
ほっぺ垂れてる
スーツ
たぶん50代

重要ポイント→優しそう、偉そう、意地悪そう、怖そう、など写真の人物から想像される内面や性質についての印象は一切伝えない。あくまで見た目の形状の説明のみとする。

maiting-geel作品
maiting
西郷どん!この人の職業は?とアンケートをとったならば、ほとんどの人が政治家と答えるのではないでしょうか。虎視眈々。権力者の目つきですね。

フクサキ作品
fuku
初々しい〜。汚れを知らない勤勉な若者というかんじですね。七三あたまの毛先がアクティブにはねているのは野心の現れでしょうか。やはり政治家志望?汚れないでほしいですね。

Sクン作品
sawa
パーツの形状のみの情報に従って描いた、いわば記号の寄せ集めであるにもかかわらず、仕上がりの顔からこの人物の心情が表出するのはどうしてなんだろう。これ、若き首相の辞任会見に見えませんか?フラッシュたかれてるし。つらそうな表情ですね。お腹でも痛いのでしょうか……。参考写真とネクタイの柄まで一致していたのには驚きました。Sクンに何か降りてきましたね。

B子作品
bana
とうとう枯れてしまいました…。うっすら笑みを浮かべていますが、「やりきった」という安堵感というより諦めの表情に見えます。髪のぼさつきが切ないです。肩のラインに沿う影も哀愁を誘いますね。

 
つづいて水曜クラス。

モチーフ:ドイツの元首相
聞き役:木村タカヒロ
目撃者役:助手Sクン
●モチーフの特徴
髪は8:2の横分け
額にかかる髪
直線の眉毛
目は大きめ
目玉小さめ
狭い眉間
面長
長めの隈ライン
うすい唇
大きい鷲鼻
鼻の下に四角いヒゲ
あご長め
厳格な服装

Nori Bee作品
noribee
描いてる途中で「よーし、賭けに出るか!」突如叫んだNori Beeさん。なんのことかと思ったら、このマークだったのですね。部品を寄せ集めていくうちに、特定の人物像が浮かびあがってきたのだそうです。大当たり!横にうっすらと描かれたデッサンは?保険でしょうか……。野望に燃える青年将校というかんじですね。焦点定まらずに泳ぐ目玉が乱心ぶりを表しているようです。

ゼキコ作品
zekiko
ゼキコさんも途中で正体に気付いたようです。標的が定まればあとはゼキコの餌食。得意のユーモアを加えてキャラ化完成です。

MARU作品
maru

今回一番の衝撃作品です。MARUさんは種明かしをされるまで誰を描いたのかわからなかったそうです。
まるで資料写真を見ながらその人物の狂気を漂わせつつカリカチュアライズする、という計算の元に描かれたと思うくらいの完成度です。

 

想像を超えた結果に、興奮してしまいました。
通常、キャラクターを制作する際には、まずは肩書きや性格を考えて、そこからビジュアルを起こしていくことが多いように思います。
文字通り、キャラクター=性格、人格なわけですから、そこが決まらないと、なかなか絵にするキッカケをつかめません。
描き手は、その性格に合うパーツを頭の中から引き出し、組み合わせて絵にしていきます。
優しい人→丸顔、たれ目。怖い人→四角い顔、細くつり上がった目、等々。
ある程度定番化されたパーツの形状と組み合せがあるように思います。
そこを、逆のアプローチでやってみたらどうなるのか、というのが今回の試みでした。

性格、人格をビジュアル化するためにパーツをチョイスするのではなく、決められたパーツをただ描き起こして組み合わせただけの絵に、性格や人格は現れてくるのか?
結果は見ての通り、恐ろしいほどに現れました。パーツを組み合わせていくうちに、勝手にそのパーツ同士が響き合い、自動的に、生まれるべくして人格が生成されていったようにさえ思えます。

そして、絵のなかで人格が形成されると、その人格をより強調するための作業が、作者も知らぬうちに追加されるようです。
お題になかったにもかかわらず、目が泳ぎ、不安げで狂気をはんらんだ表情を、皆が一様に描き起こしたことが不思議でなりません。いったい何が起こったんだ??というかんじ。

なにかとてつもなく奥深く、この先に更なる創作のヒントが隠れているような気がするので、引き続きこのモンタージュ講座、掘り下げていきたいと思います。

 


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ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ。セツ・モードセミナー卒業。1990年より創作活動を開始。 人間の顔をメインモチーフに、様々な表現法を駆使して作品を量産。2003年、バーチャルタレント集団 「キムスネイク」を生み出し、個性的なキャラクターのアニメーションを、テレビ番組やCM、WEB等で発表。 主な仕事:「ベストハウス123」「マツコの知らない世界」「GLAY」「VAMPS」など。 主な受賞:第7回イラストレーション誌「ザ・チョイス」大賞受賞、アヌシー国際アニメーションフェスティバル(2010)など多数。 絵の講師歴25年。 神戸芸術工科大学非常勤講師